個人的な話はnoteに書くことが多い(いうて書いてないけど)のですが、この話はメインブログに書くことにしました。
新卒入社したシステムインテグレータを辞めます。
辞める方の話
何をしていたか
Wikipedia的な分類でいけば、「ユーザ系SIer」です。
親会社は日本全国でも聞いたことがある人がおそらく過半数いる、某大手公共インフラ会社です。
その公共インフラを実現するため、
- エンドユーザ(会社から見るとお客様のお客様)が直接触る機械
- エンドユーザに対して情報提供するスマホアプリ
- インフラそのものの基幹にかかわるシステム
- 経理システム
- 社内グループウェア
…などなど、何から何までを受注し、運用支援しています。
私はそのうち、主に「エンドユーザに対して情報提供するスマホアプリ」を7割ぐらい、残り3割は「インフラそのものの根幹に関わる部分」を担当していました。
何をしていたかといえば、書類作成と上位説明、あとハンコ押印でした。
…システム屋?
システム開発のピラミッド構造という、(我々の中では)有名なものが存在します。一番頂点は元請けで、そこから下に降りるほどだんだん仕事量が増え、金額は減っていくアレですね。
最底辺には「IT業界はブラック」で連想する会社があるわけです。
で、我々は最上段、発注元から最初に受注する会社です。
ピラミッドで一番大きなお金が動く部分です。にもかかわらず、仕事は下のレイヤに丸投げするとか、あることないこと色々言われる部分です。
ちなみにそれは弊社の場合事実です。
軽く数千万円、場合によっては10億ぐらいのお金が(一気にではないにせよ、細切れで)動きます。
私も8000万円の見積書と3000万円の見積書、合計1.1億円の見積書を書いたことがあります。
んで弊社の仕事はというと、要件定義だけはまとめますが、開発ベンダー(っていうかっこいい名前で呼びますが、つまり下請け)を選定して、肝心の開発業務を丸投げします。
要件定義に応じて、この部分はこの会社へ、この部分はこの会社へ、という風に小分けにして見積もり依頼をし、最終的にそれの合計にマージンを乗せたものをオーナーに見積もり提示します。
正式受注したら、下請け頑張れーってやります。
工程管理や予算管理はしますが、実際の開発作業はしません。
どうしても予算が足りてなければ渋々参戦するくらい。
そう、最上位の「システムインテグレータ」は、プロジェクト管理をするだけでお金が貰えるんです。いいですね。
こんなありさまなので、開発の知識は不要です。
実際、新卒入社の過半数は情報とか関係ない大学卒・院卒です。
気持ちだけ専門学校卒も採りますが(自分も専門卒)、特に開発しません。
ただ、いざリリースした後の運用業務は自社が第一窓口になります。
開発の下請けさんはあくまで開発。
運用フェーズになったら手を引くことが多いんですね。
そうなると、やれマニュアルがないだの、やれ下請けが倒産して識者がゼロになっただの、LinuxってなんだよWindowsServer以外わからんぞとか、色々発生します。
午前3時の再起動でサーバが起きてこないから、タクシーで出社して対応するとかも当然あります。
それに対応するのも、上で工程管理している人と同一人物。わたしです。
毎日の仕事は、4割ぐらいは新規案件の受注業務と、6割ぐらいの既存システム運用です。
これで私の肩書きが「システムエンジニア」だからすごい。
システムエンジニアが多義語すぎる。
…というのが私の仕事と、仕事での不満点です。
行間から感情が漏れ出してる。
退職交渉はすんなり
めっちゃすんなりでした。
弊社は1on1が年に0〜1回あるのですが、たまたまモヤモヤが溜まったいい頃合いに1on1がありました。
そこで不満点と、今後やりたいこと(後述)を喋ったら、上司から「一度転職活動して外の世界見てみたら?」と提案されました。
上司から提案してくるとは思ってなかったのですが、それで背中を押されて転職活動に。
という経緯があったため、退職交渉も非常にスムーズでした。
あらかじめ上司から根回ししてもらえていたようで、役員にもとくに引き止められず。
社長や人事担当が敗因分析のために呼び出したりはありましたが、その程度でした。
新しい会社のこと
何をするのか
次の職場は、ひとつのWebサービスを自社開発して、その売り上げで会社を回しているところです。
twitter社とかFacebook社とかと似た感じです。あんな感じ。
一般消費者向けサービスではないので、製品名を言ってもたぶん分からないと思います。
自分はそういうのがやりたかったんだろう、と思っています。
自分たちで企画立案して、どうやったら実現できるかを考えて、自分たちで開発して、それを運用して、儲ける。
自分にとってのシステムエンジニアの姿はそれでした。
夢を追いかけた感じです。
入社前なので、本当に新しい職場の「システムエンジニア」がそういう仕事なのかはわかりませんが、少なくとも現職のように要件定義→受発注→運用という、事務職みたいなことをやるわけではなさそうで。
それだけでも自分のモヤモヤは解消できそうです。
専門学校以来ほとんどやってないプログラミングとか、
新しい言語や記法を覚えるとか、
そういうので当面手一杯になるとは思いますが、なんとか乗り越えられたらなあと思います。
何より面接で感じた雰囲気が、ウェイウェイやってる独立会社ではなく、かといって硬すぎるわけでもなく、業界の見定めにちょうどよさそうだな…と思えたのが決め手でした。
これからの暮らし
職場はちょっと遠くなります。
とはいえ、新しい職場は大阪梅田。一等地にあるあのでかいビルです。ちなみにトップ画像はミスリードです。
大阪で一番「イケてる」会社が集まってるビルというイメージなので、ついにここまで上り詰めたのかーと。
4年目で転職しただけで、別になにも上り詰めてないけど。
給料は増えます。
正直、現職がピラミッドの最上部ということもあり結構高給(とはいえIT企業としては買い叩かれてるけど)で、未経験がこれ以上の上乗せは厳しいだろうなあと思っていました。
ただ、転職エージェントさんが探してきてくれた求人はどれも現職以上の給料でした。あれ?やっぱり現職に買い叩かれてる??
特にこのご時世、現職はギリギリなんとか黒字決算できたぐらいで、年収は大幅ダウン(ボーナスカット)したのですが、次の職場はWeb系ということもあり増収中。すごいなあ。
もちろんいずれWeb系にも逆風が吹くかもしれませんが、それはその時考える。
心の健康
転職を決めて以来、いろんな人と話をしてきましたが、仕事には向き不向きがあるんだなあとようやく感じました。
自分にとっては現職が苦痛でしかなく、また「将来は周りの先輩社員のようになるんだ」と考えたらあまりに億劫すぎました。
ただ、現職はめちゃくちゃ安定しています。おそらく潰れません。
親会社は公共インフラなので大赤字が続いても倒産はすることなく(いざというときはおそらく税金が投入される)、現職はその開発会社なので切っても切れない関係です。
実際、いま弊社が倒産したら、親会社ももろとも死にます。
あと(買い叩かれ気味ではあるけど)飢えることはないです。一人暮らしはできないけど。
何より、情報システムの会社に、プログラムのプの字を知らなくとも就職できることは大きいです。
何も考えなくても考えてる姿勢さえ見せればまあなんとかなるのです。
社員の過半数は論理的な考え方ができていませんが、それでも成立しています。
なにせうちは元請け。大変な思いをするのは下請けなので。
というような、口を開けてるだけで生きていける会社なので、別に捨てたものではないです。
特にやりたいことが何もない大学生にはいいかもしれない。「IT企業勤め」って言えば、親御さんも喜ぶでしょうからね。
現職は1年に1人ぐらい退職者がいますが、出ていく人はほぼ専門卒で優秀な人。
おそらくみんな、会社の現実に気がついて、将来像を考えて、アンマッチだなという判断ができたんだろうと思います。
自分もそのひとり。
会社の現実に気づかなかったり、ギャップを感じてなければ、うちの会社を辞めるメリットは無い気がする。
最後は自分の心の健康を優先して、私は出ていくことを選択しました。
相談に乗ってくれた同期は残ることを選択しました。
自分にとって、現職は向いていなかったという意思表示をしただけで、次の職場が向いているとも限らない。
落ち着く場所を早く見つけられたらいいなあと思いつつ、まずは新しい職場で数年頑張ってみます。
現職で唯一、悔いというか何というかは、同期がめちゃくちゃ優秀で信頼できること。みんな論理的なんだよな。奇跡の年だった気がする。
最後の1年は同期3人組で1つのプロジェクトを回せてたぐらいでした。3年目社員だけで成り立つのは普通にすごい。ほかが無能とも言える
同期会にはぜひ呼んで欲しいなあ…ってのは、同期メンバーに伝えて回っています。
転職すると、もう「同期」は存在しなくなりますからね。
新卒にしか存在しない概念だし、大切な存在です。
システム開発の例のピラミッド構造、弊社レベルの元請け会社が開発能力を持てば、だいたい解決します。うちがやればいいんです。
ただ、元請けはわざわざしんどい思いをしなくとも、親会社のITニーズがある限り無限にマージン分稼げるので、あえて開発に飛び込む理由はないんですよね。
だから永遠に無くならないんです。
私見ですが、この世から「ユーザ系SIer」を全滅させても、社会は回ります。
書類を書いてるだけの、一番不要な存在だから。
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